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泡沫価格と適正価格 2002.10.26記、2005.03.10修正


歴史を紐解くと、たびたび「&&&バブル」というのが発生しては潰れる現象が発生しています。私が大学時代はバブルの最盛期で、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」というような夜郎自大な意見が一世を風靡していましたが、「南海泡沫事件」というのを大学の卒論のテーマにしました。これは、イギリスで18世紀に起きたバブル事件です。South sea bubbleで調べてみてください。

論文の内容自体は、ネタ本を引き写した安直な代物で、教授にも渋い顔をされたものですが、当時の日本バブル絶頂の時代に、過去のバブル崩壊に着目した自分の発想には、いささか自負を持っています。当時、東芝のJ3100と「一太郎ダッシュ」で印刷した論文は、今でも保存しています。今となっては、稚拙な文章で読めた代物ではないですけど。


バブルの過程では、しばしば、客観的に価値のないものに法外な値段がつきます。

訳のわからない株に高値がつくのが典型で、先述の南海泡沫事件をはじめ、最近では「インターネットで**をする」と発表しただけの「IT企業」が株式を公開し、創業者に「我々のビジネスモデルは株式公開である(事業で金を儲ける予定なし)」とうそぶかせたことがありました。本当は、そんな株は紙屑でしかないのですが。

他にも、

* オランダのチューリップ投機:球根一個が家一軒の値段 (誇張かもしれないですが)
* 1970年頃の、琉球切手ブーム:「守礼の門」切手が数万円?現在はタダ同然
* 「なんでも鑑定団」がきっかけらしい、ブリキ玩具等の高騰

など、いろんなものがあります。いずれも、「希少である」ということが価値の唯一の源泉で、後になって「何であんなものが高値に?」と笑い話になるという事例です。お宝ブームは、まだメッキが剥がれていませんけど。


読者の方の報告によると、最近の時計市場では、

* 1stGSのプラチナ版が280万円。ヤフオクでは350万円まで高騰。
* ザ・セイコー・ブックにも紹介されている12星座文字盤のマーベルが30万円、同じ文字盤のクラウンは40万円。

というような価格がついているそうです。

このような古いセイコーの価格高騰ですけど、私の目から見ると、上記の事例と同じように見えます。珍しい文字盤のマーベルやクラウンが、現行ロレックスやGS以上の値段で取引されるなんて、どう見てもおかしいでしょう?赤サブとかWネームと同じ、子供騙しの世界です。それこそ、偽造文字盤の「12星座マーベル」が出てきそうですね。

1stGSのプラチナ版が、パテックやランゲの現行プラチナモデルの倍の価格で取引されるのも、理解の外です。精密工芸品として考えた場合、どの視点から見ても、パテックやランゲの方が1stGSより価値が高いのですから。プラチナ1stGSの時計としての価値は、デッドストックで機械や文字盤の消耗・経年変化がないという前提で、まあ100万円程度が妥当だと思いますね。プラチナ1stGSより、現行18Kパテック(正規品)の方が高くて当たり前だと考えます。


私は、良いものを持つのは大好きですが、珍しいものには興味はありません。時計に限らず、カメラ、双眼鏡、メガネ、服など、GSのように価格と品質のバランスが高い次元で取れているものをいろいろ持っていますけど、それは性能にお金を払っているのであって、希少性には一銭も払う気はありません。手に入らなければ、別なものを探すだけです。

だいたい、例えばカメラを使うのは自分なんですから、世の中に10万台あろうと1,000台しかなかろうとどうでもいいと思うんですが。ライカM3が高値で取引されるのも、現行のM6やM7より機械として優れていると認識するマニアがいるからなわけですよね。

このフォーラムに来られる方には、100万円あったらぜひパテックでも買って頂きたいものです。GSフォーラム主宰者が言うのも何ですが、GSは、とりあえずSBGR002で十分だと思いますので。本当に良いものにお金を払ってください。


以上で、常軌を逸した「泡沫価格」について考察しましたが、例えばオールドGSの適正な価格ってどのくらいでしょうね?

私は「同じような時計の現在の新品実売価格」が、中古価格の上限だと考えています。SS・機械式のオールドGSであれば、最良の状態で25万円くらいでしょう。それ以上出すなら、現行の製品を買うべきです。これが例えばマーベルあたりになると、8万円程度が上限になるでしょうか。似たような時計で、ノモスがそのくらいで買えますからね。


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