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GSのメンテナンス 2005.11.18改訂

GSは立派な時計ですが、扱いを間違えれば壊れてしまいます。GSとうまく付き合うための注意点を挙げてみました。なお、現行品を前提にしています。


1. 日常の手入れ

革ベルトタイプ:
時計の革ベルトは、暑い時期に毎日使っていると、革の内部に染み込んだ汗(様々な老廃物を含む)が乾く暇がなくなり、古い汗に新しい汗が加わって腐敗してしまい、ベルト全体が悪臭を発するようになります。こうなりますと悪臭を取る方法はありません。ですので、革ベルトの時計は、夏に毎日使ってはいけません。一日使ったら、次の日は風通しの良いところで乾かしてください。そうしないと、どんな良い革ベルトでも、すぐに駄目になってしまいます。ゴム製の「ラバーベルト」であればこの心配はありませんが。

日常生活防水で金属ブレスレットタイプ:
別に説明しています。「日常生活防水のブレス時計」の手入れをご覧ください。

10気圧防水で金属ブレスレットタイプ:
多くの方のGSはこちらでしょうね。高温多湿の日本で日常使いするにはこれが最適ですし。金属ブレスの場合、使っていると汗などがついてだんだん汚れてきます。放置しておくと、ステンレスは脂がつくと錆びる性質を持っていますので、錆びる可能性もあります。さらに、特に新品のうちは、金属ブレスのコマ同士が擦れて金属粉が出ることもあり、それが原因でYシャツの袖が汚れてしまうこともあるようです。(IWCのブレス時計では、これが非常に多く発生すると聞いています)

時計を不潔にしていると、最悪の場合は金属アレルギーを発症することもあるそうです。これは一度発症すると容易に治癒しない恐ろしい「病気」です。特に夏場は、気がついた時に時計全体をセッケンなどで水洗いすることを強くお勧めします。現行GSの金属ブレスモデルは、手巻きモデルを除いて10気圧防水以上ですので、水道の圧力程度は問題ありません。水道蛇口の水圧は、標準で1気圧(0.1MPa)、最大で3気圧程度のようです。

各種BBSなどを見ますと、時計を水洗いすることに神経質になっている人が良くいます。ですが、時計を不潔にしている方がよほど問題であるのはここまで述べた通りです。「水洗いして浸水する金属ブレス時計など不要。捨ててしまえ」と私は考えております。なお、GSが準拠しているJISの防水規格については、シチズンのサイトの解説をご参照下さい。「スペック控えめ表示」で知られるセイコーのことですから、JISの規定は「十分な余裕を持ってクリア」しているはずです。

ちなみに、ロレックス・オイスター(10気圧防水)の日本ロレックスによる説明書には、下記のように書かれています。参考にして下さい

オイスターの水洗い方法
(1)リューズが確実にねじ込まれているか、クリスタルなどにヒビが入っていないかをまずご確認下さい。
(2)ブレスレットの駒の間、クラスプ(留め金)の内側、ベゼルやブレスレットのダイヤモンド等を、柔らかいブラシに石鹸をつけて洗って下さい。
(3)真水でよく石鹸を洗い流して下さい。
(4)乾いたタオルや布で拭きあげて完了です。


なお、洗う際は石鹸、ハンドソープ、中性洗剤などが考えられますが、台所用中性洗剤が一番よいみたいです。何を使うにせよ、洗剤(石鹸)成分が残らないように良く洗い流してください。40度程度のお湯で洗うだけでも十分に効果はあると思います。いずれにせよ、防水時計は頻繁に洗いましょう


現行のGSは、ラグに貫通穴がありますので、「きちんとしたバネ棒外し(例えばこれ)」を使えば、ある程度熟練すれば簡単にブレスを外せます。ただ、私も自信を持ってブレスを着脱できるようになるには危ない橋を渡りました。

ブレス外しのコツは「体得して頂く」しかないのですが、気をつけて頂きたいのが

です。私は一度痛い目に遭いました。

また、500円程度で売っていたりベルト屋さんがタダでくれるこのタイプのバネ棒外しの使用は勧めません。なぜかというと、強度に問題があるからです。大事な時計を扱うときに、工具が折れて傷をつけたりしたら嫌ですよね。

時計全体を入歯洗浄剤や超音波洗浄器につけるのは、いくら防水性が高い時計でも不可です!絶対に止めてください。


2. 数年おきの手入れ

上記で見ると分かりますが、時計を気持ちよく使うには、防水性が十分でないといけません。時計の防水性は、裏蓋・ガラス・竜頭に入っているパッキン(Oリング)によって確保されていますが、これは樹脂でできていますから、経年変化で劣化します。大事な時計の場合は、少なくとも5年に一度は専門家に見せてパッキンを交換する必要があります。これは、機械式・クォーツを問わず、時計を使い続けるためには必要なことです。

現行GSは、セイコーで純正メンテナンスを受けるのが最善です。GS公式サイトのアフターサービス案内記載の相談窓口から電話かメールで問い合わせて、宅配便などで直接送るのが一番簡単と思います。2007年現在、GS相談窓口は土日祝日でも電話対応して頂けるようになりました。気軽に電話して相談されると良いでしょう。

これを踏まえて、

クォーツGS:
電池寿命が3年になっていますので、これをスパンにメンテすれば良いでしょう。なお、公称電池寿命は3年ですが、電池交換から5年経っても余裕で動いていた例を知っています。電池が切れる時期になったら、セイコーの「お客様相談室」(以下SS)に預けて、電池交換を依頼してください。その際にパッキンを交換し、場合によってはオーバーホール(O/H)をすることを勧められるでしょう。セイコーのO/H料金は他の高級時計ブランドより格安ですので、O/Hを勧められたら素直に従った方が良いと思います。

間違っても、「電池交換680円」などという所を利用してはいけません。大事なGSが壊れてしまいます!世間には、セイコーSSと同様の作業をやってくれる良心的な時計屋さんも稀にあるようですが、普通はド素人が裏蓋を適当に開けて同じ型番の電池を入れ、裏蓋を閉めて「はいできあがり」です。パッキンの点検などするはずもありません。中には、型番が違う電池を入れて済ましている所もあるようで、前にセイコーSSに行ったら、「10年電池の時計なのを知らず、数年に一度近所の店で電池を換えていたら、時計が壊れてしまった...」と嘆いている人がいました。また、某掲示板では、「質屋でオメガの電池を換えたらキズをつけられた!ムカつく!」と騒いでいる厨房がいました。傷をつけられたくらいで済めば運がいい方なんですがね。

機械式GS:
機械式時計の場合、数年に1度、専門家によるOHを受けねばなりませんので、その時期になったらセイコーSSに預けて下さい。現行の機械式GSはロレックス同様に社外へパーツ供給が一切ないそうです。オーバーホールの際にパッキンは必ず交換されますので、防水性の低下の心配はありません。

機械式時計のメンテナンス間隔は、「気密性の高さ」と大きく関係します。気密性が高いほど油の蒸発と劣化が遅くなるからです。昭和40年代のGSでは、気密性が今よりかなり低かったので「1年半から2年おきに、懇意の時計屋さんで分解掃除を受けてください」と説明書に書いてあったそうです。現行のGSでは、裏蓋を一度も開けなければ「5年くらい」大丈夫とメーカーの人がコメントしたそうです。(又聞き情報ですが)

スプリングドライブGS:
スプリングドライブは、調速機構が電子式になっているだけで、機械式時計の一種です。ゼンマイを駆動源とし、多数のパーツが複雑に組み合わさって時を刻んでいます。スプリングドライブの場合「オーバーホール時期になると精度が落ちる」ことは恐らく発生しないと思うのですが、永く使うためには「機械式時計と同様の間隔でのセイコーでのオーバーホール」が必要です。4年おき程度でセイコーSSに送付し、メンテナンスを依頼してください。その際にパッキンが全て交換されて防水検査が行われますので安心です。


日常の手入れ、定期的な手入れは手間とコストがかかりますが、これを惜しまなければ、GSはおそらくあなたの生涯の友になるはずです。大事にしてくださいね!


(管理人おやじの失敗談)

私も、かつては「時計のメンテナンス」についての認識がなく、痛い目に遭っております。恥ずかしい話ですが、皆様に「他山の石」として頂きたいと思います。

1992年秋に就職記念に買った15万円のクレドール(クォーツ、月差15秒、日常生活防水、金属ブレス)を、実に適当に使っておりました。ブレスが汚れたら丸ごと水洗いし、電池交換はその辺の時計屋で適当に。通算で2回電池交換をして、購入から5年経過した'97年秋頃に、ガラスに曇りが出ているのに気づきました。街の時計屋に持ち込み、裏蓋を開けて処置してもらいました。50がらみの店主からは「パッキン交換は不要」というご託宣でした。この店主を信じたのが大間違いでした。商店街に時計店を構え、長年商売をしているプロと思ったのですが..

ところが、それから1年後の'98年秋に、文字盤の縁にシミが同心円状に出ているのに気づきました。大手デパートの時計売り場に、「時計メンテナンスコーナー」があったので持ち込んでみると、「文字盤の劣化はどうしようもない」「セイコーに送って、オーバーホールが必要。費用は2万5千円」ということで愕然としました。後知恵ですが、この時にクレドールを捨てても良かったかもしれませんが、「3万円でクレドールは買えない」というケチな根性で、3万円出してオーバーホールを行いました。

オーバーホール完了の直後、「セイコーSSの修理ミスで2週間で5分遅れ、コンサート会場で慌てる」トラブルもありました。最後は、時計屋の店員に金属ブレスの調整を頼んだら、この店員、Cリングの固定方法を良く知らなかったようです。歩いている途中にブレスが分解し、アスファルトに激突してガラスが割れてしまいました。それでも動いていましたが、IWCの購入を機会に捨てました。

今思うと、'92年当時の私の時計知識はゼロでした。仮に当時、ロレックスやGSを買ってもろくなことはなかったでしょう。クレドールは一種の人柱だったと考えておきます。(合掌)


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