HOME

裏蓋のシールは危険 2002.12.07記


ステンレス鋼と総称される金属は、「錆びにくい鋼」で、特殊鋼の一種です。私は冶金学に詳しいわけではないので詳細は省きますが、何でも常に空気中の酸素と反応して表面に酸化膜を形成することで、目に見えるような錆を防いでいるそうです。ですので、鉄の包丁やフライパンのように、油を引くのは厳禁です。油によって、酸素と遮断されてしまうと酸化膜が損なわれるからですね。ですので、ステンレスの手入れは「常に清潔にしておくこと」が第一になります。

たまに、ステンレスの時計が錆びてしまったと言う話を耳にします。こういう例は、時計についた皮脂などの汚れをずっと放置した結果、表面に油をひいたのと同じ状態が形成されたのが原因と思われます。よくそんなに汚れるまで放置できるものだと思いますが、気持ちよく使うためにも、ステンレスの時計とブレスレットは時々洗いましょう。


さて、SBGR001をお持ちの方が、フォーラムに貴重な体験談を寄せて下さいました。

セイコーさんのOHから帰ってきたGSには青い半透明の裏蓋保護シールがついていました。特に考えもせずにそのまま使用していました。ある日、シールの周辺部分に近いところのシールの下に非常に小さな黒い塊が挟まっていました。まずいと思い剥がしましたところ、なんとそのごみの下のステンレスがわずかにくぼんでいました。腐食です。そのほかの周辺部もよく観察してみますとわずかな点が2-3散見されました。微小な腐食と思われます。皆さんはこんなことはされないと思いますが、お気をつけくださいませ。私が深く後悔したことは言うまでもありません。

これに対する、識者のご意見は以下の通りです。

ありゃりゃ、***さん、災難でしたね。心中お察しいたします。そのようになってしまった場合の修理方法は、場所によっては研磨するという手もありますが、多くの場合裏蓋の交換になってしまいます。そうしますとシリアルナンバーも変わってしまいます。いったん腐食を起こしてしまいますと、金属全般に言えますが錆をとっても、そこから又錆を出してしまいます。例えば水入りをしてしまって錆がムーブメントに生じてしまった場合などは、多くの場合交換となります。因みに水入りをした場合の応急的な処置方法をお教えしますと(たっぷり浸かった場合はだめですけど)、文字盤を上にして竜頭をひき、電気スタンド等を10センチ程上に当てます。曇りが消えたらある程度は解消します。但し、応急的な処置です。直ぐにOHにだすことです。ケース内の水分を幾分かでも無くすことで、早ければ一週間ほどで錆が生じますから、その可能性を減らすことが出来ます。修理にだすまでの間と、技術者に渡るまでの間の期間による錆を最小に出来る可能性が生まれるわけです。

さて、裏蓋の保護シールですが店頭でも良く付けっぱなしの方がいらっしゃいます。私はおやじさんが、おっしゃっている通りの、内容を説明して剥がすようにお薦めしています。保護シール自身の粘着性は完璧ではありません。剥がれてきた部分に汚れがたまり、その汚れによって腐食が起こります。汚れの成分の殆どは皮脂や埃で、平たく言えば「垢」です。動物性の汚れですね。つまり酸性です。空気を遮断した上に酸性の汚れ。どんなに耐腐食性の高いステンレスでも、無理ですよね。錆びちゃいます。


説明書に書いてある通り、保護シールを使う前に剥がさないと、大変な事態を招いてしまうと言う貴重な教訓です。


また、GSのメダリオンを保護するためのシールと言うのが売られているようです。これは、オールドGSのメダリオンが破損するのを防ぐには一応の効果があるものの、糊が時計の裏蓋に残ってしまい、これを除去するのが難しくて、大変困った事態を招くそうです。こういう変なものは、やはり使わない方がいいでしょう。なお、現行GSのメダリオンは裏蓋への彫刻ですから、このような保護シールなどは必要ありません。


いわゆる「厨房」が身分不相応にロレックスを購入した場合、しばしば裏に貼ってある保護シールに過大な関心を持つようで、「緑色のシールは剥がさない方が良いのか」「その上に貼ってある日ロレの金色のシールを剥がすと保証が受けられなくなるのか」などという質問がロレックス関係のBBSに寄せられています。

上記のことを踏まえれば、金無垢でない限り結論は明らかですね。なお、金無垢であっても不潔ですからやはり剥がした方がいいでしょう。


inserted by FC2 system